ミクロネシア、ポーンペイ島の考古学調査での啓発活動

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今年2月~3月に引き続き8月下旬に2週間、ミクロネシアのポーンペイ島で発掘調査に参加しました。このプロジェクト「オセアニアの人類移住と島嶼間ネットワークに関わる考古学的研究」は、小野 林太郎准教授(国立民族学博物館)を研究代表者として文科省の科学研究費(国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B)、18KK0019)の助成を受けて(https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18KK0019/)、日本の考古学者のグループがポーンペイ州歴史保存局と共同して行われました。

今回はポーンペイのレンゲル島で最古期の集落遺跡を発掘する第4回目の現地調査でした。この遺跡を発掘することになった契機は、2009年に歴史保存局の依頼を受け、レンゲル島の遺跡の調査を行った際、ここで1メートル四方の試掘を行い、古い型式の土器にくわえ、その後の分析でPNGのアドミラルティ諸島産の黒曜石の破片が見つかったことでした。ポーンペイ島ではいくつの古い遺跡が見つかっていますが、本島では初期遺跡が立地する海岸部がマングローブ林で覆われてしまっているため、正確に発掘するのが難しいのですが、レンゲル島では幸い海岸部の砂浜が残っています。この調査は、まだ発掘件数が少なく様相のわかっていない2000年前にポーンペイ人の先祖がメラネシアより初めて島に到着した頃の植民期の初期ミクロネシア文化の実態を解明することに焦点を当てています。調査では、上部の地層からはガラス瓶・陶器・鉄製品などのドイツ・日本統治時代の遺物、下部の地層からは土器・貝斧・貝製装身具・動物骨・貝といった古代の遺物が出土しています。この調査の成果の一部は、共同調査者と連名で論文発表しています:小野林太郎, 山野ケン陽次郎, 片岡修, Jason Barnabas, 長岡拓也, 片桐千亜紀, 山極海嗣2022「東ミクロネシアにおける人類の移住年代と貝利用―ポーンペイ島での最近の発掘成果より」『東南アジア考古学』(41):57-72)。

またこの調査では、パシルネのビジョン「オセアニアの人々が自分たちのルーツやアイデンティティへの誇りをもち、伝統にもとづいた現在と未来の文化を創造する」の達成させるため、ポーンペイ人が自分達の歴史に興味を持ってもらうように、ボランティアとして発掘調査への参加の機会をもうけ、彼らの参加を促進しました。今回は、ポーンペイ人のボランティア2名のほかに、ミクロネシア短大の50人の学生が、発掘現場に見学に訪れました。また調査成果を一般の人々に共有するためにポーンペイ州歴史保存局で出土遺物の展示を行い、180人の人々が見学に訪れました。長岡代表理事は、展示に訪れたポーンペイ・カトリック・スクールの生徒50人、マトレニーム高校の70人、SDAスクールの20人にミクロネシア人の移住とこのプロジェクトについてのパワーポイントによるプレゼンテーションを行い、出土遺物についての説明を行いました。生徒達は初めて見る古代の遺物にとても興味を持ってくれました。またミクロネシアの若者の間では考古学や文化人類学という分野は現地で学べないこともあり、現地人の研究者が育っていませんが、ミクロネシア人唯一の考古学者であったルフィーノ・マウリシオ博士が昨年亡くなったことを聞いて、数人の生徒は考古学者になることに興味を示していました。

この調査や展示に協力して下さった方々に感謝いたします!

レンゲル島の発掘現場
ミクロネシア短大の学生50人の見学(写真:山野ケン陽次郎博士)
出土遺物の展示会に来た高校生へのプレゼンテーション
展示会で出土遺物に見入る高校生

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