パシルネのブログへようこそ!ミクロネシア、ポーンペイ島での口頭伝承の記録

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NPO法人パシフィカ・ルネサンス、通称パシルネは、2014年にオセアニア(太平洋の島々)の伝統文化の消滅に対して問題意識をもつ有志によって設立されました。それ以来、オセアニアの島々で伝統文化を未来へ伝えるため、歴史文化遺産の記録・継承・教育を支援する活動を行っています。私達は、ミクロネシア連邦、特にポーンペイ州(またはポンペイ、旧称ポナペ)を中心として現地で活動を行うとともに、フェイスブックを中心とするSNSでオセアニアの伝統文化やパシルネの活動について海外と国内に向けて発信しています。

昨年、パシルネにとって長年の夢の一つであったホームページを開設することができました!今後、不定期にパシルネの活動やオセアニアの島嶼国に関する情報をこのブログを通して発信していきたいと思いますので、よろしくお願いします!(新しい記事の通知を受けるためには、ブログの下にあるfeedyのボタンをクリックし、購読の登録をすることができます:https://blue-de.com/how-to-feedly/)

さて今日は最近、ポーンペイ島で行った口頭伝承の記録についてご紹介します。元々ミクロネシアを含めてオセアニアの島々は文字を持たない社会で、人々は自分たちの歴史やさまざまな情報を代々歌にして歌い継いだり、語り継いだりしてきました。ポーンペイ島では、伝統文化に関する膨大な知識を持つ口頭伝承の専門家がおり、彼らは社会的に尊敬をされていました。神話やチャント(太古の出来事を歌った歌謡)など重要な口頭伝承は神聖なものとされ、限られた氏族や家族内だけで伝えられていました。島では自分の知っていることをすべて話すと死ぬと信じられ、他人に教える際は、重要な部分を省いたり、本当のことを教えなかったりしました。専門家に教えを乞う場合は、島の重要な財であるシャカオ(ポリネシアではカヴァと呼ばれる)の木を差し上げるのが、古い習慣ですが、専門家も教えた後に、呪文を使って忘れさせるといったことも行われていました。また夜になると、子供達はおじいさんやおばあさんが話す昔話を聞きながら、眠りにつくというが習慣でした。

しかしこの伝統も最近のビデオやスマホなどの新しいメディアが浸透したり、若い世代が伝統文化へ興味を失ったり、現地政府が記録を行わなかったりしたため、急速に失われつつあります。パシルネの長岡拓也代表理事が協力隊としてポーンペイで活動していた1990年代前半と比べると、知識を持った老人が激減しています。若者に素晴らしい口承文化を知ってもらい、島の伝統に誇りを持ってもらうため、私達は設立以来、失われつつある神話・昔話・習慣・歌謡などの口頭伝承をビデオで記録し、若い世代に伝えるためにユーチューブで公開するプロジェクトに力を入れて行っています。これまで公開した口頭伝承のビデオは、ポーンペイ州270本、チューク州20本、ヤップ州196本にもなります。また現地の文化財行政を担うポーンペイ州歴史保存局にもこのような活動を行ってもらおうと協働して記録を行っています。

2020年にコロナ禍が始まり、ミクロネシア連邦は入国制限を行ったため、現地での活動が出来なくなっていました。昨年の8月に入国が可能となり、長岡代表理事は2年半ぶりに今年2月中旬から3月下旬まで考古学調査のためポーンペイ島を訪れることができました。調査の合間を見て6人の老人から12話を記録し、ユーチューブで公開しました(https://www.youtube.com/playlist?list=PL7c_0z1tMBDoJ2LVRvQfE_MN80tpXbVnD)。

将来的にはより多くの人々に理解してもらうためにビデオに英語で字幕を入れられればと考えているのですが、NPOの財政がかなり厳しいため、現時点では口頭伝承を失われる前に記録し、若い世代に伝えることを優先し、現地語の語りをそのまま公開しています。大切な民族の英知である無形文化遺産の口頭伝承を後世へ伝えるために記録に協力して下さったポーンペイの方々に感謝します!

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