太平洋の島々
オセアニアとは?
太平洋(オセアニア)は地球の表面の3分の1を占め、地理的に大きくミクロネシア、メラネシア、ポリネシアに分けられます。
ミクロネシアは「小さな島々」という意味で、観光地であるグアムやサイパン、世界遺産ナンマトル遺跡(ポーンペイ)、沈船ダイビング(チューク)、石貨(ヤップ)で有名なミクロネシア連邦、水爆実験による第五福竜丸の被爆で有名なビキニ環礁のあるマーシャル諸島共和国、パラオ共和国、キリバス共和国、ナウルなどが含まれます。戦前、パラオ、ミクロネシア連邦、マーシャルは、日本の植民地(南洋群島)だったため、日本の文化や言葉が現地の生活に根付いています。
メラネシアは「黒い島々」という意味で、カラフルな顔のペインティングで有名なパプアニューギニア、太平洋戦争中に激戦地となったソロモン諸島、幸福度が高いヴァヌアツやフィジーなどが含まれます。鉱物・森林資源に恵まれた大きな島が多いです。多種多様な文化を持つ約1300の言語集団が存在します。
ポリネシアは「たくさんの島々」という意味で、大柄なラグビー選手を輩出しているトンガ、サモア、ニュージーランド、フラダンスで有名なハワイやタヒチ、謎の石像のイースター島(ラパヌイ)、ツバルなどが含まれます。古代から優れた航海術を持つ海洋民で、南米まで航海していたことがわかってきました。
オセアニアの大部分の島々は赤道に近くに位置するため、一年中気温や湿度が高い熱帯ですが、ハワイやニュージーランドは温帯です。
歴史
この地域への人類の進出は、第一のオーストラロイドのグループが5万年前に東南アジアからオーストラリアとメラネシアの一部に移住し、オーストラリアのアボリジニーやメラネシアの一部の人々の先祖となりました。オーストロネシア諸語を話す第二のグループが台湾から4500年前に拡散を始め、3300年前にメラネシアに到着し、偉大な航海術をもちいて太平洋全域に植民しました。オセアニアの人々は、数千年間にわたり多様な海洋文化を開花させましたが、西洋社会との接触後、外界から大きな影響を受けました。
魅力
オセアニアの常夏の島には海を中心とした観光のために多くの人々が訪れています。人々の生活に目を向けると、オセアニアの多くの国々は、産業も限られており、発展途上国とされます。しかしフィジーやヴァヌアツが世界幸福度1位に選ばれたことがあるように、豊かな自然の中で自給自足に近いのんびりとした生活を送っています。またコミュニティ内での結びつきが強く、助け合いの伝統も残っており、私たち日本人が経済成長をとげる中で失ってしまったものが残っていると感じる人も多いです。オセアニアの人々の民族性としては、一般的におおらかで、ユーモアに富み、ホスピタリティを持っており、ホームステイなどで温かく迎えてくれます。独自の習慣、舞踊、工芸など豊かな伝統文化が人々の生活に根づいています。
日本との身近な関係
日本列島はオセアニアの島々の北側に位置し、オセアニアとも歴史的な関係が深いです。古くは海を通じて沖縄や小笠原・伊豆諸島と交流があったことが知られています。明治以降、多くの日本人がハワイやニューカレドニアなどの島々へ移民しました。第一次世界大戦が始まると、日本はドイツ領ミクロネシアを占領し、太平洋戦争終結までの30年間にわたって統治を行い、現在でも日本の習慣や日本語が残り、人口に占める日系人の割合が2割を超すともいわれています。太平洋戦争の時は激戦地となった島々も多く、犠牲になった日本人兵は約50万人ともいわれています。戦後になると日本政府がODAで援助を行っており、青年海外協力隊員・シニア海外協力隊が派遣されています。また多くの日本人がオセアニアの島々を観光で訪れ、島の人々は日本へ研修や留学に来ており、新しい友好関係を築いています。経済的にもオセアニア地域は、日本のマグロ・カツオ漁獲高の4割を占める主要な漁場であるとともに、日本の重要な貿易のパートナーとなっています。
伝統消滅の危機
伝統の継承
戦後の急速な近代化により、太平洋諸島国の人々が数千年間にわたって継承してきた先人の知恵である伝統文化は衰退し、自然とともに生きるライフスタイルにも変化がおこりました。彼らの文化は社会生活の中でまだ重要ですが、伝統の継承は危機に直面しています。しかし現地の政府などによる伝統的な知識・技術を記録する能力や努力は十分ではなく、伝統文化は適切な記録も行われず失われています。
教育
若い世代は伝統文化に興味を失っているため、伝統的な知識・技術を家庭やコミュニティ内で受け継いでいくという昔ながらの習慣は行われていません。このため学校での文化教育にもっと力を入れる必要がありますが、島の歴史や文化は学校で教えられず、教材もないことがほとんどです。また島の人々がアクセスできる自分たちの歴史や文化に関する情報は非常に限られています。
移民と気候変動
最近のグローバル化と島での限られた仕事と教育の機会のため、ますます多くの若者達が島を去り、国内の大きな町や都市や海外へ移住しています。例えばミクロネシアでは、人口の3分の1が米国に移住しています。また気候変動と海水面上昇は太平洋の島国の生活を脅かしています。この影響を受けた低い島々の人々は、故郷の島を去らざるをえなくなっています。それに対して海外で育った移民の子供達は、自分たちの言葉や文化を習得するのが難しく、アイデンティティの危機にさらされています。